2010.10.12

フランスの『味覚週間』がスタート

毎年恒例のフランスの『味覚週間』が10月11日より始まった。子供も大人もみんなで食べ物のおいしさを知ってもらおうと、フランス全国で食に関する様々なイベントが一週間繰り広げられる。その前夜祭にあたる先週末、パリ郊外のノワジー・ル・セックという移民がたくさん暮らす地域の朝市で、”おばあちゃんの郷土料理”という催しが開かれた。

パリから高速地下鉄のRERで下車すると、空気からしてエスニックっぽい。毎週、土曜日の朝市には様々な衣装に身を包んだ人たちがごった返している。その活気といったらもう凄いのなんのって圧倒されそうだ。「Siplarc」と呼ばれる市が運営する給食センターでは、『味覚週間』の間じゅう、学校給食で、このおばあちゃんの秘伝レシピを毎日日替わりで子供たちに食べさせようと試みている。給食センターの所長のアデリーヌ・ペナダラさんは「移民の家族の中にはフランスの郷土料理など食べたことのない子供たちもたくさんいます。またフランスに住みながらフランスの食材や食習慣を学んでいくのはとても大切なこと。そんな意味合いも込めて今年はおばあちゃんの秘伝レシピというアイデアが浮かびました。」と話してくれた。

月曜日にはアキテーヌ地方の『プール・オ・ポ』(今年の味覚週間のテーマでもあるフランス王、アンリ4世の没後400年を記念して彼の大好物だったこのトリ料理が至る所で振舞われる)、火曜日はカタルーニャ地方の『ビーフのペルピニオン風』、木曜日はノルマンディー地方の『イノシシのパテ』、金曜日にはノール地方の『白身魚のウォーターゾイ』が、それぞれ学校給食で出されることになっている。その日の朝市ではそんな料理を地元の人たちにも味見してもらおうと、シェフが来た人たちにサービスしている。

1990年にスタートしたフランスの『味覚週間』は、今では農業省や教育省がバックにつく国民的イベントへと成長した。全国の食品メーカーや料理人・職人、学校や一般市民など川上から川下までがひとつになって参加する大イベントは年を重ねるにつれて規模も大きくなり、今年はいよいよ日本でもデビューすることになった。しかし庶民的な大衆性こそが長続きの秘訣であることを、このフランスの人たちは決して忘れてはいない。

写真 セピア色のおばあちゃんの顔がイラストで描かれているポスター、Siplarcの所長アデリ―ヌさんとシェフのジャンピエールさん、大勢の人でごった返しているブースの様子

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2010.10.12

食べることが大好きな男のある物語

 

“フランス東部のロレーヌ地方出身のひとりの男がパリジャンになった。しかしキッシュロレーヌもミラベル(すもも) も決して忘れることはなかった。これはひとりのジャーナリストの物語。彼は世界中のほとんどの料理を食べつくした。そして辿り着いたのはフランス料理が一番だと。料理に生涯を捧げ、インディペンデントのコラムニストとして、地球にやさしく、世界中の味がスタンダード化されることにもの申し、ビオと喜びを愛し、スローフードの理念「美味しい・やましさのない・正当性」を継承する・・・” と、裏表紙に書かれている。 

『僕の辿ってきた食の道』(Mes chemins de table : hoebeke出版) 、そんなタイトルの本をつい最近出した我が友人、JPGENEの出版記念パーティーに駆けつけた。以前、”すごくおいしいビストロがあるから”とランチを誘ってくれた「ラシーヌ」という店の軒先を借りて、わざわざナンシー( 注 ロレーヌ地方の県庁所在地 ) から取り寄せたという「パテ・ド・ロレーヌ」と「ベルガモットのキャンデー」が振舞われた。

Le Monde Magazineに毎週、辛口だけど滅茶苦茶まっとうな食のコラムを書き続けて早7年、リベラシヨン、アクチュエル、ル・マタン・ド・パリ、ル・ヌーヴェル・オプス、ジェオ、ル・ポワン、レクスプレス、マリアンヌ、エールフランス・マガジン・・・・、見事なまでのその筆の冴えは右から左、中道派まですべての読者をひきつける。「終戦直後に生まれた僕は、当時やっと配給生活が終わったところ。教師の家系に生まれながら、僕だけがその系譜をたどらなかった。それは、もうスキャンダル! 貧しい生活のなかにも毎年庭でとれたミラベルを摘んで家族みんなでテーブルを囲んで分けあった。それが僕の原点」だと話してくれる。リベラションでは政治記者として鳴らした。しかし、ふとしたことでジャック・マキシマン(注 ロブションやデュカスと並ぶ超有名なグランシェフ) と知り合い、彼の厨房で2週間、料理の手ほどきを受けて料理に開眼。以来、食のコラムニストになった。

上着のポケットにさりげなく「Le Monde」紙を無造作に突っ込み、顔写真を撮られることをぜったいに拒む(食のジャーナリストはみんなそう! )、なによりもビンビン尖った議論好き。いわゆる一昔前にいそうなフランスの典型的左翼インテリジェントだ。考えてみれば私が70年代の中ごろに最初にパリにやってきた頃は、そんなフランス人が巷にゴロゴロしていたように思う。世界のグローバル化とともに世の中がスタンダード化されて、こんなフランス人も希少価値になりつつある。絶滅品種ならぬ、絶滅人種にならぬよう自分たちのアイデンティティーはしっかりと守りたい、そんなことを考えさせられた夜だった。

        写真  ロレーヌ産パテとベルガモット・キャンデー、著書にサインするJPGENE

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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