2010.09.19
フランスの絶対王政時代の象徴、ヴェルサイユ宮殿。ルーヴル美術館に並んで世界中の観光客がこぞって訪れるその宮殿で、今、村上隆の展覧会が開かれている。
『朕は国家なり』という有名な言葉を残した太陽王ルイ14世が最も自慢していた「鏡の間」の回廊には突然、マルチカラーの「フラワーボール・カイカイ・キキ」がドカンと遮り、また当代きっての庭師だったルノートルが設計した大庭園には「オヴァル・ブッダ」の金色に輝く5メートルものオブジェが太陽に反射している。きっとルイ14世が生存していたら「太陽は私か?それともお前か?」と慌てふためいたに違いない。
ところが・・・である。この村上の展覧会に今、賛否両論の嵐が吹きまくっている。”ベルサイユ・モナムール”と呼ばれる宮殿愛好家グループのひとりは「ムラカミの美意識なんかどうでもいい! ベルサイユ宮殿は神聖な場所。そこにマンガ文化を持ちこむなんて言語道断。恥を知れ! フランス文化の冒涜だ!」と鼻息荒い。一方、宮殿の館長でかつて文化大臣をしていたジャンジャック・アイヤゴン氏はそんな反対派など全く意に介さない。「国王ルイ14世は芸術・文化にとてもオープンで寛大だった。ベルサイユ宮殿が人々を幸せにしてくれる場所だと願っていた。ムラカミのオブジェもここを訪れる人たちをハッピーにさせてくれる、という意味では全く同じ意味をもっている。」
現代アートのアーチストとしては世界6番目の値が付いている村上隆の作品。ベルサイユ宮殿としてはむしろ、そんな彼の”金銭的価値感”で集客を狙っているのは誰の目にも明らかだ。一昨年はアメリカのアーチストのジェフ・クーンを、そして昨年はフランスのグザヴィエ・ヴェランと、アバンギャルド派のアーチストを招聘することでベルサイユ宮殿はイメージチェンジを図ろうとしている。
ルイ14世はバレエやスペクタクルを愛してやまなかった。フランスの王としてはかなりアバンギャルドな王様だったとも言われる。きっとムラカミがベルサイユに来てくれたことを知ったら一番歓迎しているのは、ひょっとしたらルイ14世その人本人ではないだろうか・・・・。
ベルサイユ宮殿に飾られている村上隆のオブジェ。新しいもの好きだったルイ14世が生きていたらきっと面白がったに違いない!
(写真 Le Parisien)