2010.07.08
400年の歴史を誇るパリの老舗レストラン「ラ・トゥール・ダルジャン」。その屋上で今、ミツバチの養蜂が行なわれている!といっても自家製の自己消費程度。ことの起こりは1996年に遡る。フランスでは突然ミツバチが激減してしまった。その10年後の2007年には今度は世界中でも同時に同じ現象が起こったのだ。いったい原因はどこにあるのか?世界中の研究者が今その原因究明に乗り出している。
ミツバチはハチミツを造るばかりではない。植物の花粉を運ぶ媒体としても、とても大切な役目を担っている。もしも全滅してしまったら受粉が行なわれなくなるから農業も全滅してしまう。そうなったら風による受粉でとれる限られた果物や、或いは遺伝子組み換えによるとうもろこしや小麦ばかりが食卓に並ぶことになる。食べる楽しみ所じゃなくなる。それはもう人類にとっての最大の危機だ!
その原因はいろいろあるようだが、病害虫にやられたり、農家が殺虫剤を撒きすぎたり、遺伝子組み換え作物の増加、パソコンや携帯電話の大気中の電波とも言われている。どれをとってもミツバチの成育を妨げるものばかりだ。否、ミツバチに限らず人間にとっても体に悪いことばかりだ。農業大国フランスでは農家が養蜂家に畑の一部を提供して、そこでミツバチを飼育してもらったり、科学肥料や殺虫剤の代わりにオーガニックなものへの開発をはじめたり、はたまたミツバチにプロテインを与えるなど対策に躍起だ。
という訳で、パリの街中でも養蜂を奨励しようと国が積極的に乗り出している。オペラ座の屋上やLVMHの本社ビルの屋上など、みんなハチミツ作りに忙しい。もしかしたら「パリ産ハチミツ」のAOC(原産地呼称制度)が出来る日もそんなに遠いことではないかもしれない。南アのワールドカップで大顰蹙をかったブブゼラ。あの音をフランス人は「ミツバチの鳴いてる音」と形容していたけど、これからはパリの観光名物はブブゼラならぬ本当のミツバチの音を堪能することになるのかもしれない。
(写真 トゥール・ダルジャンのレストランから見たパリのノートルダム寺院とセーヌ河)