2010.05.16
カンヌ映画祭もたけなわの今日この頃。先日、久々にアラン・ドロンがレッドカーペットを駆け上がっているのをTVで見た。アラン・ドロンといっても、「それ誰?」って言うジェネレーションがほとんどだと思うのであえて説明を加えるならば、あの「太陽がいっぱい」という映画で冷徹で野心家の屈折した青年を見事に演じて一躍世界の大スターになったフランスの二枚目俳優だ。あのガラスのような透明なブルーの瞳に恋焦がれたのは私だけじゃなかったはず!フランスのシネマ黄金時代をジャンポール・ベルモンドと二分した俳優だ。
今回はイタリアの巨匠ルキノ・ビスコンティ監督のオマージュもあって「山猫」という映画を引っさげてやって来た。共演した女優のクローディア・カルディナーレも一緒。あの頃と比べれば当然、それなりの貫禄はついているものの、やっぱりスターはスター。カッコイイ!髪は真っ白だし皺はあるけど、でも雰囲気といいそのクラスといい世界のドロンは永遠だ。
しかし彼はインタビューでこんな事を言ってた。「もう山猫は観たくない。ビスコンティもバート・ランカスターもセルジュ・リジャーニもあの映画で共演した人たちはみんな他界した。そんな映画をいま自分ひとりだけ観るのは忍びない。もう私にとって映画は過去のものだ!」 なんという潔さ!以前、何かのインタビューでも彼は「自分はいつでもあの世に行ける準備が出来てる・・・」 なんてことを言っていた。現役の俳優でドロンに匹敵する大物なんかいない。でもそんな偉大なスターの最後にしては、なんだかちょっと淋しすぎないだろうか?
(写真 Le Figaro ヴィスコンチの「山猫」のときのアラン・ドロンとクローディア・カルディナーレ)