2010.05.14
ここ1年ぐらい前から「アペリ・ジェアン」と呼ばれる集会がフランスのあちこちの都市で開催されている。アペリ・ジェアンとは厳密に言うと「アペリティフ+ジャイアンツ=巨大なアペリティフ(食前酒)」の略で、アルコールを持参してもいいパーティーのこと。Facebookで集まった何千・何万人の人たちが街の公園や広場に自発的に集まり、知らない者同士が知り合いになっておしゃべりする、たったそれだけのことだ。いま流行の”つながり”を求める若者たちの輪だ。しかし、すでに自治体や警察などは「危険」を察知していたが、まずはトラブルがない限りは禁止することも出来ずに許可していた。
ところが昨夜、ナントという地方都市に集まった9000人もの人たちのうち21歳になるひとりの若者が帰り際に橋から落ちて死亡した。死者をだしたということになれば事態は変わってくる。早速、警察が介入して誰がオーガナイズしているのか、ネットワークがどこにあるのかなど事実を追求しようもののFacebookという匿名性から全く足がつかめない。すでに、この集会に参加している人たちの中にはドラッグを持参している者も少なくないという。こうした集会を今後も野放しにしておけば犯罪の巣窟になるのは時間の問題だ。
いまパリやリオン・マルセイユなど大都市の郊外、俗に言う”バンリュウ”といわれている所では移民問題から端を発して麻薬密売の組織がアンダーグラウンドに結成されている。特に仕事にあり就けない移民の若者たちをディーラーに仕立て上げて組織的に縄張りを拡張している。かつて移民の子どもといえば貧困に喘いでいたが、今では大金を持っているから余計に危険だ。彼らの行動に歯止めが利かなくなるのも目に見えている。そんな組織がこのアペリ・ジェアンを利用するとなれば・・・・ああ恐ろしい!
参加者のほとんどは健全な市民であるのは間違いない。彼らは友人を誘ったり兄弟・親子で楽しんでいる人たちがほとんど。情報を交換し合いながら笑って楽しくひと時を過ごす。でも、そんなごく身近な平和が希少価値に変わってしまう時代が来るのだろうか?
(写真 Le FIGARO 9000人の人たちで埋め尽くされたナント市の広場)