2010.05.30

散々だった映画「隣人祭り」

「初日は観客の入りはたったの2500人。クリティックも最悪。完全に負けです!」。意気消沈した声は電話の向こうのダヴィッド・ハダッドさん。監督・兼・シナリオライター・兼・俳優さんだ。ロードショウ公開の前日はあんなに元気だったのに。よっぽどこたえたのだろう。いつもの持ち前の明るさはどこかに行ってしまった。

フィガロもル・モンドもプルミエール誌も、よくぞここまで書くか!というほど容赦なかったのは私も知っていた。「でも、私が見に行った日は10人ぐらいはお客さんが入っていたし、後ろの席に坐ってた男性なんかは声を出して笑っていたわよ!」。そう励ましてあげると「メルシー」とひとこと。たまりかねた私は、「でも、最初は誰だって苦い経験はするものよ。それよりもこんな一流の新聞やシネマ専門誌に書いてもらえるだけでもすごいじゃん。しかも全国のコンシエルジュたちは全員間違いなくあなたの味方よ!」 ちょっとほっとしたようなため息が電話の向こうから聞こえてきた。

今年から5月の最終金曜日に変わった隣人祭り。翌日がオフとあってか、みんな夜遅くまでだべってリラックスしていた。我が家の隣人祭りでも話の話題はもっぱらこの映画のことばかり。初対面同士でも「あれ観た?」というのが合言葉。そんな意味では格好な話題を提供してくれていたし、そんな意味では「隣人祭り」の映画はきちんとその役をこなしていたように思うのだが・・・

(写真  パリの街中いたる所に張り出されている「隣人祭り」のポスター。ロードショウ前日のプレス・コンフェレンスで住宅大臣と環境大臣の前でスピーチするダヴィドさん)

 

vin et culture (2010.05.30)  |  未分類  | 

2010.05.25

一夜のうちに、シャンゼリゼがお花畑に!

パリのシャンゼリゼが一夜のうちにお花畑に変身してしまった!「オー、シャンゼリゼ、オー、シャンゼリゼ・・・」、あの有名なシャンソンでもお馴染みの花のシャンゼリゼ大通りが文字通り、本当にお花畑になってしまった!22日の夜から23日の明方にかけて2000人の若い農家のボランティアやフランス・ボア・フォレ(フランス森林協会)の人たちがトラクターで野菜や果物、オリーヴやブドウの木などを植えた。勿論、牛や山羊・羊なんかも忘れない。

24日は精霊降臨祭、休日とあって凄い人の数。若い人から結構シニアまで、みんなとても楽しそうだ。サルコジ大統領もカーラ夫人を伴って飛び入り参加。来ている人たちを驚かせた。「ナチュール・キャピタル」、自然環境都市パリを目指して、もう一度、農業を見直そう!そんなイベントだ。「若い農民」協会代表のウイリアム・ヴィルヌーヴさんも「農民というと、いつもアグレッシブなストばかりやってるイメージですが、でも本当はそうじゃない。自然は人を和ませてくれるもの。もっと農業を身近に感じて欲しい」。

1990年に”グランド・モアッソン”という大稲刈りをしてから早20年。今年はキャピタルをカンパーニュ(田舎)に変えてしまった。果たして次回はどんなサプライズをしてくれるのか?中途半端じゃない、このスケールのでっかさ。まさにフランスの農業大国たる所以だ。今からなんだか、もうワクワク。待ち遠しい。

、一夜のうちに

vin et culture (2010.05.25)  |  未分類  | 

2010.05.16

アラン・ドロン、されどアラン・ドロン!

カンヌ映画祭もたけなわの今日この頃。先日、久々にアラン・ドロンがレッドカーペットを駆け上がっているのをTVで見た。アラン・ドロンといっても、「それ誰?」って言うジェネレーションがほとんどだと思うのであえて説明を加えるならば、あの「太陽がいっぱい」という映画で冷徹で野心家の屈折した青年を見事に演じて一躍世界の大スターになったフランスの二枚目俳優だ。あのガラスのような透明なブルーの瞳に恋焦がれたのは私だけじゃなかったはず!フランスのシネマ黄金時代をジャンポール・ベルモンドと二分した俳優だ。

今回はイタリアの巨匠ルキノ・ビスコンティ監督のオマージュもあって「山猫」という映画を引っさげてやって来た。共演した女優のクローディア・カルディナーレも一緒。あの頃と比べれば当然、それなりの貫禄はついているものの、やっぱりスターはスター。カッコイイ!髪は真っ白だし皺はあるけど、でも雰囲気といいそのクラスといい世界のドロンは永遠だ。

しかし彼はインタビューでこんな事を言ってた。「もう山猫は観たくない。ビスコンティもバート・ランカスターもセルジュ・リジャーニもあの映画で共演した人たちはみんな他界した。そんな映画をいま自分ひとりだけ観るのは忍びない。もう私にとって映画は過去のものだ!」 なんという潔さ!以前、何かのインタビューでも彼は「自分はいつでもあの世に行ける準備が出来てる・・・」 なんてことを言っていた。現役の俳優でドロンに匹敵する大物なんかいない。でもそんな偉大なスターの最後にしては、なんだかちょっと淋しすぎないだろうか?

(写真 Le Figaro ヴィスコンチの「山猫」のときのアラン・ドロンとクローディア・カルディナーレ)

vin et culture (2010.05.16)  |  未分類  | 

2010.05.16

ロダン美術館の夕べ

ヨーロッパ中の美術館がタダで散策できるなんて!そんな夢のような「ラ・ニュイ・ヨーロぺアン・デ・ミューゼ」という催しが15日の夜から16日にかけていっせいに行なわれた。今年で6回目。フランス全国1300ヶ所の美術館――ルーヴルからオルセー、グランパレ、名もない小さな村の”オラが美術館”まで、とにかくすべての美術館という美術館が無料で一般公開されるからアートマニアだけじゃなくて普段、美術館なんて・・・という人たちにも大人気だ。昨年は何と180万人の人たちが足を運んだというから凄い!たった一晩のためだけに派手なライティングしたり巨大スクリーンに映像を写しだしたりと、みんな自分たちの美術館をアピールできる最大のチャンスだと考えているのだろう。

美術館といえば、そうそう、今週オープンしたばかりのメッツ市の”ポンピドー分館”も勿論、今晩はタダで見学できる。こちらはフランス東部、ロレーヌ地方というかつて炭鉱で栄えた街がいまでは貧困の象徴となったメッツ市を経済活性化させようと、当時の文化大臣(現在のヴェルサイユ宮殿館長)とメッツ市長が手を組んでできた大変’政治性’の強い美術館だ。建築には日本の坂茂氏が起用され、そのユニークなデザインも話題になったことはすでに我々日本人も承知のとうりだ。

オープニング時にはサルコジ大統領はじめ、ミッテラン時代の文化大臣ジャック・ラングなど錚々たる政治家のオンパレード。そのあたりにフランスの文化がどれだけ政治と絡んでいるか、文化はイコール経済活性化の起爆剤にすぎないと考えているフランス人の割り切りが見てとれて興味ぶかい。歴代の大統領たちが自分色を出すために様々な美術館を建ててきたが、サルコジ大統領はグランパレを自分のものにしたいらしい。

それにしても先日訪れた世界文化遺産モンサンミシェルに日本人観光客が大勢来ていたことは前にもお伝えしたとおりだが、我々日本人というのは本当に文化・芸術が好きな国民性だとつくずく感じる。世界中のモニュメントに寄与しているんじゃないか!今度のポンピドー分館にも日本人建築家を起用したのも、ひょっとしたら日本人にお願いすれば日本人観光客がたくさん来てくれるのでは・・・というフランス人の皮算用がコンペの時になかったとは否定できないように思うのは私の考えすぎだろうか?

         (写真  ロダン美術館で  ラ・ニュイ・デ・ミューゼのポスター)

vin et culture (2010.05.16)  |  未分類  | 

2010.05.14

Facebook パーティー

ここ1年ぐらい前から「アペリ・ジェアン」と呼ばれる集会がフランスのあちこちの都市で開催されている。アペリ・ジェアンとは厳密に言うと「アペリティフ+ジャイアンツ=巨大なアペリティフ(食前酒)」の略で、アルコールを持参してもいいパーティーのこと。Facebookで集まった何千・何万人の人たちが街の公園や広場に自発的に集まり、知らない者同士が知り合いになっておしゃべりする、たったそれだけのことだ。いま流行の”つながり”を求める若者たちの輪だ。しかし、すでに自治体や警察などは「危険」を察知していたが、まずはトラブルがない限りは禁止することも出来ずに許可していた。

ところが昨夜、ナントという地方都市に集まった9000人もの人たちのうち21歳になるひとりの若者が帰り際に橋から落ちて死亡した。死者をだしたということになれば事態は変わってくる。早速、警察が介入して誰がオーガナイズしているのか、ネットワークがどこにあるのかなど事実を追求しようもののFacebookという匿名性から全く足がつかめない。すでに、この集会に参加している人たちの中にはドラッグを持参している者も少なくないという。こうした集会を今後も野放しにしておけば犯罪の巣窟になるのは時間の問題だ。

いまパリやリオン・マルセイユなど大都市の郊外、俗に言う”バンリュウ”といわれている所では移民問題から端を発して麻薬密売の組織がアンダーグラウンドに結成されている。特に仕事にあり就けない移民の若者たちをディーラーに仕立て上げて組織的に縄張りを拡張している。かつて移民の子どもといえば貧困に喘いでいたが、今では大金を持っているから余計に危険だ。彼らの行動に歯止めが利かなくなるのも目に見えている。そんな組織がこのアペリ・ジェアンを利用するとなれば・・・・ああ恐ろしい!

参加者のほとんどは健全な市民であるのは間違いない。彼らは友人を誘ったり兄弟・親子で楽しんでいる人たちがほとんど。情報を交換し合いながら笑って楽しくひと時を過ごす。でも、そんなごく身近な平和が希少価値に変わってしまう時代が来るのだろうか?

  (写真 Le FIGARO   9000人の人たちで埋め尽くされたナント市の広場)

vin et culture (2010.05.14)  |  未分類  | 

2010.05.11

ユネスコの世界文化遺産 「モンサンミシェル」を救え!

あるアンケートによれば日本人に最も人気がある世界文化遺産といえばフランス西海岸のモンサンミシェルなのだそうだ。そんな予想通り先日取材で訪れた時も、まるで江ノ島にいるかと錯覚するぐらい日本人観光客ばかりだった。ここは潮の干満の差が15メートルもあり、満ち潮の時には修道院がある島がすっぽりと、まるで海の中に浮かんでいるように見える。これがまた我々日本人には神秘的でたまらないのだろう。とくに満月と新月の時には大潮になリ、その速度が尋常じゃないぐらいに早い。干潮のときには海が18kmぐらい引くから、むき出しになった砂浜でゆったりと散歩なんかしようものなら突然、猛烈な勢いで波が押し寄せてくる。そんな様を想像してほしい。いくら走たって逃げようがない。かつて巡礼で訪れていた人たちが何人も潮に呑まれて命を失ったという。そんなストーリーも日本人の想像力をかき立ててくれるには充分なのだろう。人気スポットなのがよく分かる。今でも島の入り口には干満時刻が表示されて観光客に注意を促している。

しかし、そんなモンサンミシェルにいま危機が訪れている。

まだ環境保全などと騒がれていなかった時代に、ひとりでも多くの観光客を誘致しようと島と対岸の陸地との間に自動車道路を作ってしまったのだ。それによって潮の流れが完全に遮られて堆積物がどんどんたまってしまった。その結果、大潮の時も海が流れ込まなくなってしまったのだ。もう海に浮かぶモンサンミシェルも見れなくなってしまうのだろうか?! そんなことが起これば観光収入も減ってしまうと、国と自治体は有識者を交えてかつてのような海洋環境を再現しようと工事を計画した。工事は2005年からスタートして2015年に完了する予定だ。しかし、たまった堆積物を取り除くにはかなり大掛かりな仕掛けが必要だ。ここを流れるクエノン川という川にダムを作り、その水流の勢いで堆積物を押し流すのだそうだ。そんな工事の模様が逐一とサイトで見られるから興味のある方はどうぞ、ここをクリックして下さい。www.projetmontsaintmichel.fr

歴史的モニュメントと最新テクノロジーの融合。世界中の人たちに環境の大切さを知ってもらう、またとないチャンスだ。それはまたユネスコの世界文化遺産に登録されるということの最大のメリットなのかもしれない。それを十二分意識したモンサンミシェルの取り組みは、まさにフランス人らしいプラグマティズムで自国をアピールするのに多いに役立っているようだ。

    (写真 クエノン川から見た夜景  モンサンミシェルの全景 ) 

vin et culture (2010.05.11)  |  未分類  | 

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  • 南谷桂子
    vinetculture@wanadoo.fr
    フランス在住
    株式会社ワインと文化社
    代表取締役・ディレクター

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