2010.03.05
男子フィギュアスケートの高橋大輔選手、まずは銅メダルおめでとう!
この種目では日本に初めてメダルをもたらしてくれたという快挙。でも高橋選手がもたらしてくれたものはそれだけじゃなかった。大勢の若い人たちがTVに釘づけになって固唾を呑んでいたあの姿、そして銅メダルが決まった瞬間、抱き合ってひとつになって喜んでいた! こんなにまでも若い人たちが喜びを発散している姿を見たのは、もう何年ぶりだろうか? やっぱり彼らにはこぼれるようなこんな笑顔が似合っている。
今回、服装の乱れや記者会見での悪態でひんしゅくをかった国母和宏選手。品格の問題をとやかく言われたらしいけどオリンピックという極限状態でいるひとりの選手にメディアから大臣まで国民全員がこぞって追い詰め、いじめている姿はちょっと異常じゃないか?! 「悪いのはお前だ。いいたいことがあるならメダルを取ってから言え!」。そんな空気に、まだ21歳そこそこの若者が”オトナ”の回答なんかできる訳がない。
所変わりパリ、フランスの男子フィギュアスケートの金メダル候補だったブライアン・ジョベール選手は何度も転がって不測にも16位という最悪の結果をもたらした。その時、彼はメディアに向かってこうはき捨てた。「チクショウ、この呪われたオリンピックのバカヤロー!」普段は貴公子のようにエレガントな彼がこれほどまでに豹変したことにちょっとただならぬ迫力を感じたが、さすがにちょっとやそっとのことでは個人攻撃しない仏メディアも一斉に彼を叩きのめした! 翌日、仏フィギュア連名の会長がジョベール選手に「この大バカ野郎め!」と言い放ったこともおまけに報道した。しかし、その時ジョベール選手はひと言こういった。「・・・正面きって会長は僕にそう吐き捨てました。でもそう言われても仕方ない。この2年間、僕は天狗になりすぎていた。みんなが僕にアドバイスしてくれようとしていたのに耳を傾けようともしなかった。そのツケがいま全部自分に回ってきた。自業自得。会長の言葉をストレートに受け入れよう! 悪夢のようなオリンピックは終わった。早く新たなページをめくって一から出直したい・・・」。やっと王者の風格が戻ってきた瞬間だった。彼は25歳、世界の頂点に立つにはまだまだ逆境のひとつやふたつ乗り越えていかなければならない。しかしオリンピックというものが選手を成長させ、言葉には表せないほど多くのものをもたらしてくれるものであることを今回、日本とフランスのオリンピックに対する国民性の違いから多いに学んだような気がする。